帝産湖南交通の「乗車拒否」問題への取り組み

パーフェクトバスを走らせる会スタッフ 脇坂 洋一

JCIL、パーフェクトバスを走らせる会では、9月から滋賀の帝産湖南交通の「乗車拒否」問題に取り組んでいます。今回はその取り組みについて報告したいと思います。
 今回、乗車拒否にあったAさんは、京都在住のJCILの利用者で、定期的に大津市に出かけていました。Aさんは、石山駅から上稲津駅の区間で帝産湖南交通バスを利用していましたが、石山駅で降車中に乗務員が後ろから車いすを支えていなかったため転倒し、その後バス会社は「安全の確保」を理由にAさんの乗車を拒否したのです。Aさんは、その後数回にわたって乗車を求めましたが、バス会社は「安全性が確保できないため、乗車はお断りする」との旨の対応をとり続けています。
私たちは、このような不当な乗車拒否を撤回させるためにバス会社をはじめ、監督官庁の近畿運輸局、マスコミなどにも働きかけてきました。
乗車拒否があった9月5日の一週間後にスタッフが帝産湖南交通社を訪れ交渉しましたが、対応した担当者は傾斜がきつく、バスベイ(バス停付近の歩道に作ってある切り欠き。バスが止まっても交通に支障をきたさないようしたバス停留所)が無いなど、バス停の構造をあげて「安全の確保」ができないと主張しました。9月16日と19日には数名のメンバーが現地を調査した際にもバスへの乗車を拒否されています。
その後わかったことですが、バス会社は低床バスを運行する157のバス停のうち、29のバス停しか車いす使用者の乗降車を認めておらず、その内部規定も作成していました。滋賀県内を運行するほかの3社は、車いす使用者の乗車を認めており、帝産湖南交通者の対応は明らかに異常なものでした。
9月20日には、バス運行の許認可権をもち、様々な指導を行う機関である大阪の近畿運輸局に要望書を提出しました。私たちの要望は、車いす使用障害者の「社会参加」機会を奪い続けている不当な「乗車拒否」を止める、二度とこのような事態が起こらないよう社員への接遇教育研修を徹底させる、ノンステップバスを増やし、低床バスのダイヤを固定することなどです。交渉では、9月中に帝産湖南交通社への指導を行うこと、JCIL、当事者Aさんに経過報告を行うことを確認しました。

乗車拒否撤回のための闘いは、多くの仲間たちとともに取り組まれています。
地元滋賀では、長浜のCIL湖北、大津の滋賀CILとの話し合いを行い、長浜のCILだんないの方も行動に駆け付けてくれています。11月4日、5日に堺市で開かれたバリアフリー当事者リーダー養成研修ではアピールの時間をいただき、帝産湖南交通社本社への要望書提出行動の参加者を募った結果、11月9日の要望書提出行動には、滋賀をはじめ、大阪、兵庫から約20名の仲間が集まりました。
当日は、草津駅・石山駅での宣伝活動と石山駅からのバス乗車行動も並行して行なわれました。石山駅から帝産バスに乗車した行動の参加者が行き先を告げたところ、そこでは降車出来ないので降りるよう求められました。粘り強く交渉を続けると、担当の課長が出てきて内部規定を示しながら、乗車拒否を会社の方針としてやっていると明言しています。その時の乗務員の発言からは、帝産が行っている低床バスでの車いす乗降研修が実際に車いすを用いたものでないことも明らかになりました。
草津市の帝産湖南交通本社で行われた要望書提出は、一階の食堂を会場にして行われました。食堂には介助者、支援者を含めて30名以上が入り、熱気に包まれました。マスコミが4社来ていましたが、会社は交渉の場になった食堂に入ることを拒否しました。
会社側は弁護士を含めて3名が席につき、話合いは約30分行われましたが、会社はAさんの転倒の事実を認めず、車いす使用者のバス利用の予約制を提案するなど、乗車拒否の撤回を求める私たちにとって到底受け入れることができないものでした。
要望書を渡す段になって、再度マスコミを入れることを要求したところ、会社はそれを認め、提出の模様はマスコミのカメラやビデオに納められました。話合いの後、草津駅前の飲食店で報告会を行い、今後の取り組みについて確認をしました。参加者の一人の「乗車拒否の問題でこれだけの当事者が集まり、意思表示をしたのは画期的」との発言が強く印象に残っています。

 数十年にわたる障害者たちの粘り強い闘いは、彼/彼女らの移動を阻害してきた交通上のバリアを少しずつ取り除いてきました。公共交通機関においては、駅のエレベータの設置や低床バスの導入が進み、バリアフリー新法(障害者や高齢者の自立生活を支えるための基盤である、公共交通機関や建物、道路などのバリアフリー化を促進するための法律)やそれに基づく省令などが作られるなど、法整備も進められてきました。しかし、今回のような乗車拒否は各地で報告されています。
低床バスの研修で車いすを使用していなかったとの帝産バス乗務員の発言があったように、乗車拒否は事業者の接遇に問題があります。当事者参加の研修で接遇の改善をすることによって、車いす使用者がバスを利用しやすい環境を整備すること。車いす使用者も積極的にバスを利用していくこと。今回のこのような問題を起こさないためにはこうしたことが必要だと思います。
 私たちは、車いす使用者の移動の権利を奪う乗車拒否を許さないために、これからも取り組みを続けていきます。ご支援よろしくお願いします。

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 帝産湖南交通に対して近畿運輸局の警告→

 2月20日 帝産湖南交通との話し合いが持たれました→

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