基本理念
”人は人として生まれ、人として死ぬ”  その誕生と死については健常者であれ障害者(心身の不全によって障害を受ける人)であれなんら変わることはない。
 しかし、障害者が「人として生きる」ということについては健常者と比較して天と地ほどの差が存在する。我々は障害者であっても人として生まれ人として死ぬのでありそれと全く同じ「人として生きる」ことを希求しているのである。 しかるに、現代の社会は、経済的、社会的効率の作り出した虚構として障害者は生かされて生きながらえる存在にしてしまっている。国や地方自治体が行う「障害者への施策」は自立しようとする者の主体性を認めるものではなく、本当の意味での援助にはなり得ていない。また一般的に障害者が自ら高めようとする自立への意欲に対しても、はじめから不可能と決めつけ、「人として生きる」上で悩み傷つくことさえも健常者となんら変わらないことを理解しようとはしない。「人として生きる権利」すなわち「基本的人権」を完全に歪めているのに気が付かないのである。その健常者優位の社会が作り出してきたゆがみを表現する「障害者は隔離して庇護をする」という既成概念は「障害者はやっかい者として扱う」という一方的なものであり、そこに基本的な誤りが存在してきたのである。

 そうした基本的誤りのある既成概念を障害者自身も容認して、「隔離的で庇護的な環 境」すなわち依存した生活を送っている限りにおいては、本来、自立生活能力を必要としないのであり、また、この社会の中で「独立して」自立生活をしていく方法を勉めて学ぶ機会は決して訪れないのである。

 今、障害者自身は「隔離的で庇護的な環境」すなわち「依存」から脱却して「自立生 活」へ移行する主体として最大限の努力が必要となったのである。

 ここに、人権意識のある多くの人たちの願いと協力を背景として「対等・平等に生き る権利」を行使して社会に大きく貢献する自立生活運動を推進することの責任が課せられたことを自覚し行動しなければならない。

 我々は、既成概念の変革を怠けて放置することは許されない。それは、単に障害者の 「人としての尊厳」を奪うに止まらず、この社会の総ての人間にとっても完全な敗北を意味することになるからである。この誤った既成概念を容認して済ます時代は既に終わり、自立生活を希求する障害者の人権を擁護し総合的な援助サービスを提供する機関が要求されるに至ったのである。

 障害者の社会的ハンディに対して援助示唆する機関である『日本自立生活センター』 (Japan Center for Independent Living)は、障害者による障害者のための自立生活運動の拠点として設立の意義を有するものである。
一九八七年六月 日本自立生活センター
代表 長橋栄一


基本理念のページに戻る